Life style magazine

暮らしスタイルマガジン
「てまひま手帖」

立地よりもありたい姿を優先 雑誌で見たあの世界観を実現

お客様インタビュー (更新: )

楽ではないけれど、楽しい暮らし“てまひま暮らし”を実践している人を訪ねる企画「てまひま暮らし人」。第26回は、編集部がてまひま不動産 設計担当の粟野とともに、東京都杉並区にあるお宅を訪ねました。

結婚を見据えて、ふたりの理想の世界観を描ける家を探していたFさんご夫婦。築17年の中古マンションを購入し、リノベーションに挑戦します。ありたい姿を実現するために、ご夫婦はどのようにして叶えたいことを盛り込んで空間をつくり上げていったのでしょうか。築浅から築古、戸建住宅からマンションまでありとあらゆる家を見たおふたりが今の暮らしを始めるまでの道のりについて伺いました。

オーダーキッチンを主軸にした、奥様理想のリビング

粟野お邪魔します。今日はお天気が良いのでリビングが明るくて気持ち良いですね。

尚稔さん粟野さんこんにちは。ついこの間もお会いしたばかりだから久しぶりな感じがしませんね。昼は明るく開放的でまるで部屋の空気が澄んでいるかのようです。一方、夜はムードがあって落ち着きますよ。

左からFさんご夫婦と、設計担当の粟野、広報の植松。粟野はFさんご夫婦と何度となく食卓を囲み、思いを共有し合ってきた。

編集部わあ、素敵なオーダーキッチン! お料理がご趣味だとか。

良江さんそうなんです。素材にこだわった料理やおもてなし料理をつくることが好きで。器もたくさん集めているのでそれを見せられる収納が欲しかったこと、料理がしやすく器やカゴ、グリーンを飾れるスペースにすることに憧れていました。

白いタイル壁に木製のオーダーキッチンが明るく爽やかな雰囲気。キッチンメーカーに通い、カウンターの厚みやコンベクションオーブンの設置など、本格的な料理ができるようにこだわり抜いた。

陽がかげり室内のトーンが落ち着いた時にライトアップすると、パッと華やぐのがお気に入り。

編集部豊かな暮らしが想像できて羨ましいです。いつでもお呼ばれされたい! まるで雑誌に出てきそうなお部屋ですね。

良江さんありがとうございます! インテリアやライフスタイル雑誌を熟読することが趣味。とあるモデルさんの暮らしのスタイルに出会ってから長年憧れて続けていて、その世界観で自分のキッチンをつくりたいと思っていたから嬉しい。

粟野初めて良江さんにお会いした時に、お気に入りの雑誌を手渡されて「これ読んで!」って言われましたよね。良江さんが持つ圧倒的な熱量に感銘を受けました。

良江さんそうそう。言葉で説明するよりこれを読んでくれたら、私の描いている世界が伝わるかなって思って。

粟野驚きましたが、嬉しいですよね。私たちはお客様の「こんな理想がある」の理想の解像度をもっとあげたい、と思いながらコミュニケーションをとっています。家をつくる過程で、お客様がご自身の思っていることやプライベートのことをお話してくれることも。そういう時には私も自分のことを伝えていきたいと思っています。双方が自分たちのことを知れると、お客様にとっても”ありたい姿を鮮やかにするパートナーなんだ”とより実感してもらえるし、私もお客様の叶えたいことや理想がより見えてくるなと感じます。

尚稔さん僕は、室内の設計については妻の世界観を叶えることを全面的に応援していました。あとは予算との兼ね合いですよね。どこまで予算内でそれを実現できるかとも思っていましたが、時折予算超過になりそうなタイミングでは、アイデアを出し合って。そこに粟野さんがいてくださることで、夫婦だけでは解決しきれないことが、解決されたと思っています。

理想のライフスタイル、ありたい姿を考える

編集部おふたりは、ご結婚を見据えたタイミングでお部屋探しを始めたそうですね。

尚稔さんそうですね、当初はエリアにこだわりを持っていて、中央線沿線の人気駅周辺で駅近での暮らしを理想にしていたんです。

良江さん戸建住宅もマンションも両方見ましたね。その途中で出会ったのがてまひま不動産でした。

編集部出会いのきっかけは、どんなことだったのでしょうか?

良江さんもともと無垢材フローリングに興味があり、ネットで「自然素材」「リノベーション」と検索したらてまひま不動産がヒットしたんです。お店が当時の自宅近くにあると分かり、行ってみよう! と来店予約したのが始まりです。

てまひま不動産を選んだ理由のひとつが無垢材を使用していること。多数ある床材からこだわりにこだわって選んだのは、チーク材。

尚稔さんお話をするなかで、てまひま不動産を運営するリブランさんが手がけた「自然と共生するマンション エコヴィレッジ」の見学会に行ったんです。そこで自然素材をふんだんに取り入れた心地良さに惹かれました。

編集部その後も含めて、どのくらいの数の物件を見たんですか?

良江さんもうそれはそれはとにかく多い! 20件以上内見したんじゃないかな。

尚稔さん築浅物件から築古物件まで、予算の範囲も広げて探しましたね。もう途中から見れば見るほど迷う。内見しているなかで、ここともうひとつの物件とで迷っていたんですよね。そこは希望の沿線の駅近ということで立地がとても良くて。

粟野でもそこだと、私はおふたりの望む暮らしが実現できないと思ったんです。良江さんに渡していただいた雑誌にあったような世界観、なによりこのキッチンの世界観は、その物件では叶えられない。一方でこの家は、立地がそこまで良いとは言えなかったものの、窓から見える景色とマンションが緑に囲まれた環境の良さに惹かれていたんですよね。

窓のあるキッチンは四季折々の樹木の色合いが目に入る。自然を感じられるキッチンがおふたりにとって理想だったため、最終的にこのマンションに決めたそう。趣味のグリーンも随所に並ぶ。

尚稔さんそうなんです。窓から外の景色が見えるこの雰囲気のコーナーキッチンをつくりたかったんです。

粟野たとえ沿線は希望から外れたとしても、キッチンコーナーを造作する際に、こちらの物件の方が理想の暮らしに合わせた間取りの変更や、好みの床材に張り替えできるなど、メリットがあったのです。叶えたい世界観が実現できると確信していました。

良江さん物件を見れば見るほど迷っていく私たちに粟野さんが「ご自分たちのやりたいことは何ですか」と問いかけてくださって、ハッとしました。

粟野家探しをするなかで、ご自身のありたい姿や「この家での理想の暮らしって?」とイメージを抱いて欲しいなと思っています。ついつい目先の条件にとらわれがちですが、心地よく長く暮らす上では一番大切だと思っています。

尚稔さん今の家はもうひとつの候補物件のような好立地ではないですが、粟野さんの言葉で気持ちの揺らぎがなくなり、この物件に決めることができました。

夫婦のやりたいことを取り込み、スペースに緩急をつける

編集部キッチン以外にはどんなこだわりを詰め込みましたか?

良江さん私が外せなかったのは、アーチ型の通路ですね! リビングで寛いでいる時にこの丸いフォルムのアーチがある景色を眺めていたかったんです。

粟野このアーチの角度や高さもこだわりましたね。何度も計測しましたもの。

こだわりのアーチと室内窓。窓の向こうの飾り棚にはご夫婦ふたりが集めてきた雑貨が並び、窓からのぞく姿はまるでショップのよう。

良江さんアーチにかけるファブリックもテキスタイルが美しく見えるように、角度や長さも工夫を重ねましたね。

和室だったスペースを書斎として縮小し、その分リビングダイニング、キッチンを広くとったプランに変更。造作壁を追加し、そこに室内窓とアーチを設えた。

編集部同時に、尚稔さんのこだわりも組み込まれたそうですね。

尚稔さん夫婦の趣味やライフスタイル、ワークスタイルなどで大切なこと、譲れないことってなんだろうと話し合いましたね。私はパンづくりが趣味なので、キッチン横に製パンブースをつくりたいと思い、実現しました。

尚稔さんの趣味であるパンづくりができるスペース。念願のマイスペースが嬉しく、頻繁にパンやお菓子づくりをするそう。この日は尚稔さん手づくりのケーキのもてなしがあり、編集部一同感激!

尚稔さんパソコン作業のための書斎もこだわりだよね。最初はいらないと思ったけれど、ひとりになれるスペースがあった方が良いと妻に言われ、アーチの奥の小スペースに収納と書斎を設けました。

リビングの景色のアクセントにもなっている窓の奥は、可動棚のスペース。そして、書斎としての尚稔さんのデスクがある。夫婦とはいえ、ひとりになれる時間やスペースは大切。

尚稔さん当初は必要ないかなと思っていましたが、使い始めてみると、穴にこもる感じがとても気に入っていますし、テレワークの日はここで仕事をすると集中できます。

粟野希望を叶えていくためには、たとえ面倒でも一度こだわりも憧れもアイデアも全部棚卸しして、そこから優先度を順番に整理していくことが重要なコツですね。こぼれてしまってはもったいないイメージやアイデアもたくさんあるはずですから、一度すべて棚卸をしてみる。そのうえで、役割に合わせた強弱をつけるとか、使い方を絞り込みすぎない工夫を施すことで、描いた暮らしが実現しやすい設計ができればという思いがあります。

良江さんリノベーション前に存在していた和室をなくしたことがそうですよね。リビングにゆとりを持たせ、アーチ型の通路を設けるために和室をなくし、その代わり収納と書斎のための小スペースにし、ぎゅっと間取りを縮小させました。

【BEFORE】リノベーション前のリビング。和室の存在感があり、キッチンがコンパクトでやや閉塞感がある。

尚稔さんそもそもトイレやお風呂、居室の1室をリノベーションの範囲から外したことも大きいですね。やりたいこと・やらなくて良いことを取捨選択した結果です。

照明を主役に居室をコーディネイト

編集部内装を決める上で決め手となったことはどんなことですか?

粟野内装を決める上でメインにしたかったのは、無垢の床材と、この木製のシャンデリアですね。あまりお目にかからない珍しい照明で、存在感がありますよね。これも良江さんがいつも手にしている雑誌からインスパイアされたイメージをもとに探し当てたんですよ

良江さん照明など、自分たちで用意したインテリアアイテムは、一つひとつウィンドウショッピングをしてこまめに購入していたんです。ですが、このシャンデリアは具体的なイメージがはっきりあるのに、それにハマる「これだ」というものがなかなか見つからなかった。

粟野金属製ではなく”木製”がよかったんですよね。

良江さんそうなんです、絶対に木製のものがよくて。とにかくこれだけはずっと探し回りました。目黒や自由が丘のアンティークショップを何度も検索しては足を運び、諦めかけた時に出会ったのは嬉しかったなあ。

雑誌を片手にアンティークショップをはしごして、ついに出会ったダークブルーの木製シャンデリア。後ろのリビングドアの色はシャンデリアのトーンと合わせた。リビングルームでひと際輝く存在だ。

編集部想像を凌駕する熱量ですね……。尚稔さんはそれにずっとご一緒されるんですか?

尚稔さんそうです。後で後悔したくないし、して欲しくないですよね。私自身もアンティークは好きなので、ひたすら見つかるまで一緒にまち歩きしていました。

粟野良江さんがやっと出会えて購入を決めたシャンデリアの色合いが、この美しいダークブルーネイビーとアンティークゴールドだった。それを活かしたいなと思い、装飾壁やドアパーツなどのカラーをブルートーンとアンティークゴールドの色合いで提案しました。

ダークブルーの壁が無垢材の床とマッチした寝室。ご夫婦で探し当てたライトを設置し、夜は雰囲気溢れる空間に。

L字型の廊下に角度のある壁を新しく立てて設けたアーチ型の飾り棚スペース。季節の飾りや植物を置き、内壁にコンセントも配置したため、夜間も美しい存在感となっている。リビングのアーチ型とのリンクしているのもポイント。

ドライフラワーやバスケットなどもアレンジして飾る。休日にインテリアショップや雑貨店を巡り買い集めるのが楽しいのだとか。

編集部物件が決まってから内装を決めるのに、約半年。そこからは早かったそうですね。

良江さん打ち合わせ期間は3ヶ月間、工事期間も3ヶ月間でした。少しでも気になったことがあれば粟野さんと常に相談していましたね。粟野さんがいなかったら辿り着けなかったと思います。

粟野おふたりとも「現物主義」を大切にされていたので、可能な限りご確認いただく場の提供を心掛けていました。

尚稔さん粟野さんはなんでも聞いてくれるまさにパートナーだった。例えば夫婦だけでは擦り合わせきれない時にも粟野さんに間に入っていただくなどして、上手に話をまとめてくださったり。そんな道のりを経てのここでの暮らしに満足していますよ。だから今でもたまに粟野さんを我が家にご招待しています。

編集部お仕事の関係を超えたつながりですね。

良江さん料理が好きなので、一緒につくっていただいたこの空間でのおもてなしの意味を込めて招待しているんです。夫の趣味であるパンづくりが捗ったり、光たっぷりのリビングに家族を招いてホームパーティをしたり。これからは友人たちも招きたいし、バルコニーでの過ごし方も試してみたい。出来上がった家を今もどんどん暮らしやすいようにアレンジしています。

尚稔さん根気よく丁寧に、ありたい姿を導いてくれるのがてまひま不動産。家づくりは人生の棚卸しですね。このタイミングで人生をじっくり見つめることができて感謝しています。

「今日の夕食は何にしよう?」と談笑する尚稔さんと良江さん夫婦。「これからはバルコニーでガーデンパーティも楽しいね」と夢がふくらむ。

立地の良さよりも、自分たちが実現したい空間づくりを優先したことで豊かで充実したライフスタイルを叶えたご夫婦。室内の間取りもやりたいことやらないことを取捨選択し、窓からグリーンが見えるコーナー型のオーダーキッチンを選び、それに続く開放感あふれるナチュラルなリビングスペースを設けたことは、リノベーションならではのスタイル。ありたいライフスタイル・世界観がこれからどんどんアレンジされていくのでしょう。ご夫婦の暮らしの経年変化が楽しみです。


企画:株式会社リブラン
編集:tarakusa
⽂:永見薫
写真:丹野雄二