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「てまひま手帖」

姉弟それぞれの「自分の空間」 部分リノベで叶える新しい居場所

お客様インタビュー (更新: )
関連ワード: DIY無垢材キッチン

楽ではないけれど、楽しい暮らし“てまひま暮らし”を実践している人を訪ねる企画「てまひま暮らし人」。第29回は、てまひま不動産の営業担当・杉内と設計担当・内田とともに埼玉県志木市のエコヴィレッジへ。

趣味や家族のかたちの変化とともに、暮らしのスタイルも移りゆくもの。家を購入した当初は心地良いと思っていた間取りでも、新たなしつらえが必要になったり「もっとこうしたら暮らしやすくなるかも」と思う瞬間が増えてくるのではないでしょうか?

リブランが自然と共生する住まいとして展開する「エコヴィレッジ」にひと目惚れし、分譲開始当初から暮らしているMさんご夫妻にも、お子さまが生まれ、姉弟となり、大きくなってくるにつれてお悩みが。そう、「子ども部屋をどう確保するか」という課題に直面したのです。

そこで選んだのが、必要な部分だけをアップデートする「部分リノベ」。小中学生の姉弟が気持ち良くそれぞれ独立した空間も持てるようにと工夫した“2段ロフト”を中心に、趣味のキャンプ用品の収納づくりやキッチンの改修、また猫ちゃんの専用スペース造りなどを行いました。家族との暮らしをさらに快適にする部分リノベの魅力に迫ります。

娘の「部屋がほしい」という声

杉内お久しぶりです。お子さんたち、本当に大きくなりましたね。

KAEさんお久しぶりです。上の子が中学生、下の子が小学生になりました。ふたりともあの部屋が気に入っているみたいで、休日はほとんど籠っているんですよ。

編集部Mさんご夫妻は、このエコヴィレッジに分譲開始時からお住まいなんですよね。どのように見つけられたんですか?

MASAKAZUさん友人が住む朝霞のエコヴィレッジに遊びに行ったことがあったんです。自然素材を活かした住環境や屋上菜園がとても素敵で、印象に残っていた。当時は練馬に住んでいたので東武東上線沿線で物件を探していたのですが、たまたま内覧したマンションの向かいにエコヴィレッジがあったんです。「あれ?見たことあるデザインの建物だな」と思って確認したら、やっぱりそうだった。

杉内すごい偶然ですね。てまひま不動産を運営するリブランが手掛けたエコヴィレッジは、自然素材をふんだんに取り入れ、無垢材の床や調湿効果のある内装材、風通しの良い間取りが特徴。この志木のエコヴィレッジには、ロビーに薪ストーブがあって、入居者のみなさんが共有で使えるんですよ。

MASAKAZUさんまさに、その薪ストーブに僕はぐっときて。もともと薪ストーブのある暮らしに憧れていて、それがマンションで叶うなんて思ってもみなかった。

中央左から営業担当・杉内と設計担当・内田。アウトドア好きのMASAKAZUさんは、新規入居者のために薪ストーブの使い方レクチャーもしている。

エコヴィレッジ志木のロビーにある薪ストーブ。その周りには大きなテーブルとベンチが置かれ、入居者同士の交流の場にもなっている。

KAEさん私のマンション選びの絶対条件は、物件の目の前に建物がなくて、景色が開けていることでした。このエコヴィレッジは目の前が大学や高校なので、将来的に高層の建物ができる心配がない。それに、新築マンションによくある白くてのっぺりした空間とは違って、無垢材の床の温もりが心地良いことも、私たちの好みにぴったりだったんです。

編集部おふたりが持っていらっしゃった条件や憧れが叶う物件だったんですね。

KAEさん最初は夫婦ふたりで快適に暮らしていて、いつか子どもが生まれても3LDKなら十分だと思っていたんです。でも、ふたり目が生まれた頃から収納や部屋の使い方に少しずつ不便を感じ始めて、このままだと厳しいかも、と感じる場面が増えてきた。住み替えも一度考えたんですが、この環境と物件が気に入っていたので、離れがたくて。部分リノベなら、ここで暮らし続けながら変えられるかな、と思ったんです。

編集部とはいえ、お子さんがいるとどのタイミングでやるのか迷いませんか?

KAEさんそうですね。そんななかで一番のきっかけになったのは、コロナ禍で子どもたちが自宅にいる時間が増えたこと。当時小3だった娘が「自分の部屋がほしい!」と言い始めたんです。夫は男兄弟で育ったので「一緒の部屋で良いんじゃない?」と言っていたんですけど、私自身も弟がいるので、娘の気持ちも、姉弟それぞれのプライベートスペースの大切さもよく分かる。早めに部屋をつくってあげたいなと。

MASAKAZUさんそれで、てまひま不動産に相談したんだよね。リブランのスタッフさんとは定期的なイベントで顔を合わせる機会があったし、もちろんエコヴィレッジのことは熟知している。この温もりのある雰囲気を大切にしながら改修案を提案してもらえるという安心感がありました。

杉内ありがとうございます。おふたりがどんな暮らしにしたいのか、オンラインで何度も話し合いを重ねましたね。

KAEさん最初は子ども部屋をつくれれば良いかなと思っていたんです。でも、打ち合わせを重ねるうちに「玄関にアウトドア用品を収納できるスペースがほしい」「キッチンを明るくしたい」「猫のトイレや通り道も確保したい」と、どんどん自分たちのなかにあったものがリクエストとして増えていって(笑)。そのたびに杉内さんが柔軟に対応してくださって本当に助かりました。

“2段ロフト”で子ども部屋を上下に区切る

編集部デザインプランはどうやって進められたんですか?

内田まずはメインとなる子ども部屋の配置決めからですね。当初の案では、リビングから向かって左側にあった和室とバルコニー側の洋室を改修して、それぞれ姉弟の部屋にする予定だったんです。でも、KAEさんから「部屋の広さや日当たりは平等にしたい」という希望があったことで、それに沿ったプランをいちから考えることになりました。

間取り図のビフォーアフター。それぞれの部屋の壁を取り払っていちから間取りをアレンジ。

KAEさん条件を平等にすることで子どもたちそれぞれが納得できて、そして「これが自分の部屋だ!」と納得できる空間が必要だと思ったので、どうにか限られた面積でバランス良く分けられないかと考えていました。

内田最終的に辿り着いたのが、部屋の境界に上下2層の空間を生み出して振り分ける、いわば“2段ロフト”の構造です。既存の壁を取り払い、それぞれの窓を確保しながら2段ロフトを造作することにしました。

2段ロフトのイメージ図。角部屋で窓が多かったこともあり、それぞれの空間に窓を確保することができた。子ども部屋の中央に造作の2段ロフトを設置し、上を娘さん、下を息子さんのスペースに。

子ども部屋は入口を左右に分けることで個室感もちゃんと確保。壁紙はそれぞれ子どもたちがセレクト。

編集部床面積を単純に区切るよりも、高さを活用することで結果的に面積以上のスペースを生み出せるんですね。この”2段ロフト”のアイデアはどのように生まれたんですか?

KAEさんネットで検索している時に、たまたま2段ベッドをアレンジしたようなイメージを見つけて「これだ!」と思いました。うちはもともと、子どもに広すぎる部屋を与えるのは避けたいと思っていて。余分なモノを持たないくらいの広さで、快適に過ごせる空間で良い。このアイデアなら限られた面積を有効に使えると思いました。

竣工後の子ども部屋。2段ロフトの内側はあえて合板仕上げにすることで、子どもたちの好みで自由に塗装したり、棚を取り付けたりできるように余白を残した。

お気に入りの漫画や雑貨を並べたり、絵を飾ったりと、それぞれの秘密基地をつくりあげている様子。白い有孔ボードはKAEさんが設置したもの。直接フックや棚を設置すれば新たな収納機能を得られる。

内田デザインを進めるなかで「ちゃんとお子さんたちに気に入ってもらえるだろうか」という不安も正直ありました。完成後、娘さんがロフトに上がってニコニコしながら遊んでいる姿を見た時、ほっとしましたね。

KAEさん息子も友達を呼んで遊ぶために、自分で部屋を片づけるようになったんです。自分の空間を大切に思ってくれているんだなぁと感じています。結果的にこの“2段ロフト”は大正解でしたね。

左)棚板の位置を自由に変えられる可動収納棚はD.I.Y.で設置。娘さんのお気に入りの漫画が並ぶ。右)子ども部屋の改修によっておよそ半分の面積ほどが残ったバルコニー側の洋室だった部分は、壁を無くしてリビングと繋がるサンルームに。日当たりが良く、両親の読書スペースとしても大活躍。

“土間”の機能を持たせた収納スペース

杉内ほかにも、ご夫婦共通の趣味がキャンプで「キャンプ道具を収納するスペースをつくりたい」というご希望がありましたね。

MASAKAZUさんそうなんです。家族が増えてからキャンプ道具もどんどん増えてしまって。最初は車中泊から始まったんですが、テントを買ってからは子どもたちの寝袋やチェアなどがどんどん増えて……。

KAEさんこれまでは和室の押し入れにしまっていたんですが、外で使ったものを家の中に運び込むのは、泥や虫がついているかもしれないし気が引けるんです。それに、駐車場から家まで運ぶのもひと苦労。“土間”みたいに、そのまま汚れを気にせずに収納できるスペースがあったら良いなと思っていました。

内田そこで、玄関脇にキャンプ用品を置けるようにと空間を広めに取ったのが“仮想土間”です。

編集部か、仮想…….とは?

玄関と繋がった“仮想土間”には、KAEさんが空間のサイズにぴったり合うように市販のスチールラックや棚を配置。天井まで無駄なくスペースを活用している。

内田ほんとは土間じゃないけど、まるで土間であるかのように捉えて使う。土足では上がらないけれど、“土間”の機能を持たせた空間、ということですね。床をモルタルやタイルに貼り替える案もあったんですが、コスト面を考えて、既存の無垢フローリングを活かす形にしました。

KAEさんおかげで屋外で使った道具を部屋の奥まで持ち込まなくて済むようになり、片付けの負担が格段に減りました。この収納スペースのサイズに関しては、夫のこだわりも詰まっているんです。

編集部例えば、どんな部分ですか?

KAEさん私は「収納スペースはスッキリ見せたいなぁ」というイメージしかなかったんですけど、夫は「この道具を置くならこれくらいの幅があった方がいい!」と、具体的な数字を内田さんに伝えていました。

MASAKAZUさんキャンプ道具って大きさも種類もさまざまで、少しでも空間の幅や高さが足りないと片付けられない道具が出てきてしまうんです。収納内部の広さはしっかり確保して、外側はできるだけ無駄を省いたデザインにしてもらいました。結果的に、僕と妻、両方の希望をうまく反映できたんじゃないかなと思います。

編集部それで実用性も見た目も両立する収納が仕上がったんですね! 役割分担が夫婦ではっきりしていると意見がぶつかることも少なそう。

MASAKAZUさんまぁ、その時は僕がすぐ折れます(笑)。

必要に応じてフレキシブルに変える

編集部床も異なる無垢材を組み合わせているのが個性的で素敵ですね。

MASAKAZUさん床に無垢材を使うことは、リノベを始める前から決めていました。この物件に入居した当初の床は栗の無垢材だったんですが、それが枕木メーカーの端材から作られた希少な材料で、同じものを手に入れるのは難しくて。そこで、内田さんに新しく部分リノベした部屋に合う素材を提案していただきました。

内田今回は、思い切ってまったく別の樹種であるカバ材を採用しました。既存の栗材とは色味や木目が異なりますが、あえてその違いを際立たせるように明快に貼り分けました。継ぎ目部分は樹脂カバーで隠さず、既存の床を丸ノコでシャープにカットし、自然な切り替えを表現しています。

写真手前が新たに採用したカバ材。節が少なく、主張しすぎない控えめで落ち着いた印象がポイント。それぞれの木の表情が際立つオリジナルの空間になった。

バルコニー側からリビングを眺める。以前は床材の切り替え部分までがリビングだったが、部分リノベで壁の位置をずらして、リビング空間を広く取った。

編集部キッチンも明るくて気持ち良さそうですね。

KAEさんキッチンは私がずっと変えたかったポイントでした。以前は、シンクの頭上に吊戸棚があって、さらにリビングに向かってカウンターが張り出していた。そのため収納力は十分だったんですが、どうしても圧迫感があって、光を遮る原因にもなっていたんです。そこで、吊戸棚を撤去して開口部分を広げ、明るく開放的な空間にしてもらいました。キッチンから子ども部屋が見えるのも気に入っています。

シンクの上の吊戸棚とカウンターテーブルを撤去した代わりに、背面に作業台となる収納と新たな吊戸棚、そして棚板を設置。システムキッチンも引き出しが多いタイプに入れ替えたので、全体的な収納量がアップ。

編集部棚の位置が変わるだけでこんなにもガラッと変わるものなんですね。後ろの白いタイルも可愛い。

KAEさんあれ、実はシートなんです(笑)。自分で貼りました。あと、飼っている猫のトイレスペースも工夫しましたね。場所に悩んでいたので、壁の中に組み込んでもらい、外からは見えないようにしていただきました。

左)リビングと寝室をつなぐ猫の通り道も造作。トイレは壁の中に隠すことで見た目もすっきり。右)気ままに部屋の行き来を楽しんでいる愛猫の紋(モン)ちゃん(提供写真)。

編集部猫ちゃんのためのアップデートまで。それにしても、土間の棚づくりやキッチンのタイルシートなど、KAEさんは本当に手を動かすのがお好きなんですね。

内田KAEさんは部分リノベ前からご自身で壁を塗られたりと、暮らしのてまひまを楽しんでいらしたんですよね。今回も、空間を“完成しすぎない”ように意識して設計しています。例えば、2段ロフト部分は合板仕上げにして、あとから塗装や棚の取り付けができるように。収納も造作で完璧につくり込むのではなく、スペースだけ確保して自由にアレンジできる形にしました。

KAEさん大きな造作はプロにお願いして、細かい部分は自分たちで手を加えられるスタイルが、私たちにはちょうどいいんです。家族の成長とともに、やりたいことも必要なことも変わってくるもの。だから、部分リノベをやるにしても、なるべくフレキシブルに動かせるような空間にしておくことがポイントかなと思います。

編集部それが部分リノベの醍醐味ですね。

KAEさんでも、自分で手を加えられる限界も感じていて(笑)。たとえば、土間の棚は市販のものを置いているのですが、サイズに合ったモノを選ぶのも、設置するのも大変で……。今思えば、最初からプロに造作をお願いすればよかったなぁと。次にリノベをするときは、もう少し細部までプロの方に相談したいですね。

内田いえいえ、KAEさんのアレンジは本当に素敵ですよ。でも、もし困った時はいつでもご相談くださいね!

子どもたちもそれぞれの部屋を手に入れて気に入っている様子。壁に飾られたアートは絵の仕事をされていたKAEさんのご両親から譲り受けたもので、アメリカの画家であり、アリゾナ州立大学の美術教授も務めたポールスチュアートの作品。幾重にも折り重なった手描きの線が、家族の時間の重なりを表現しているかのよう。

部分リノベの魅力は、必要に応じて空間をフレキシブルにアップデートできること。 Mさんご夫妻は、あえて“完成させすぎない空間”をつくることで、家族の成長に合わせたアレンジを楽しんでいます。思い出を重ねながら、家族とともに育つ家。子どもたちの家に対する愛着も、いっそう深まっていきそうです。


企画:株式会社リブラン
編集・文: tarakusa
写真:丹野雄二(提供写真以外)