足りないところはD.I.Y. 戸建てリノベで手に入れた「楽しみが尽きない家」
楽ではないけれど、楽しい暮らし“てまひま暮らし”を実践している人を訪ねる企画「てまひま暮らし人」。第23回は編集部がてまひま不動産 設計担当の内田とともに、東京都日野市にあるご夫婦のお宅を訪ねました。
中古の木造一軒家を購入し、かねてより自然素材を用いたリノベーションに挑戦しようとアイデアを温めていたおふたり。戸建てリノベーションで暮らしはどう変わったのでしょうか。現在の素敵な生活に至るまでを伺いました。
駅からの距離よりも、豊かな自然やゆとりを優先
内田お邪魔します。あ、リビングの脇に新しく棚が出来ていますね。
かなさん内田さん、いらっしゃ〜い! 板を塗装して自分たちで組み立ててみたんです。どうでしょう?
内田素晴らしいですね。自分が設計担当した空間がこんなに活き活きと使われているなんて感動です。
旦那さんここに暮らし始めてから、妻は今まで以上にD.I.Y.を楽しんでいますよ。
編集部アンティークの家具や照明も空間にすっかり馴染んでいますね。おふたりは以前どちらにお住まいでした?
かなさん以前は杉並区の築50年の賃貸のメゾネットに住んでいました。古い家ならではのレトロな雰囲気は気に入っていたのですが、少し手狭に感じ始めたので、そろそろ引っ越そうかなと。
編集部最初から戸建て希望でしたか?
旦那さんそうですね。僕自身が上下左右を部屋に囲まれたマンションがあまり好きではないのと、ギターなどの楽器も演奏するので、音が気にならない戸建てにしようと決めていました。当時の賃貸物件が約50平米だったので、より広い約70~100平米を希望と設定して、予算と照らし合わせながら東京のなかでも日野や国立の西側エリアに絞っていきました。
編集部他にはどんなポイントを優先したんですか?
旦那さん自宅から駅までの距離よりも、隣の家との間隔が近すぎないということ。庭があるか、周辺の自然環境はどうかなどもポイントでした。以前住んでいたところは家同士の間隔が狭く、高速道路も近かったので騒音が気になっていたんです。それに空気も綺麗だとは言えなかったので、新居はそこをクリアしたものにしようと。
かなさんふたりとも仕事で都内に出ることが多いので、駅から1本で都心へ行けるのも大切なポイントでした。
編集部内見はどれくらい行ったんですか?
旦那さん5軒ほど。不動産屋さんに内見案内をしていただく前に、自分たちで実際に物件があるエリアまで足を運んで、周辺環境や雰囲気を確認してから連絡をしていました。
編集部これから暮らす場所がどんなところなのか、事前にチェックするのは大事ですよね。この家を見に来た時の第一印象はいかがでしたか?
かなさんふたりとも好印象でしたね。ここはなだらかな丘になっていて景色が美しいし、近所には竹林や浅川という清流で有名な川や水路がある。旦那さんは特に自然豊かな場所が好きなので、すぐ気に入って購入に踏み切りました。
内田日野市は用水路で有名な土地ですよね。この家の施工中、よく川沿いの土手を歩きながら来ていたんですけど、そこからの景色もまた格別でした。
かなさんそうなんです。晴れている日は富士山も見えて、気持ちが良いんですよ。
テーマは「古道具が活きる家」
編集部この物件を購入された後、リノベーションを担当する会社として、てまひま不動産を選ばれたそうですね。
かなさんてまひま不動産のことは、家づくりに関する雑誌で知りました。私たちがイメージしていたリノベーションでは「自然素材を使うこと」が絶対条件だったので、自然素材や空気の流れ、光の取り入れ方などを大切にした施工事例の多いてまひまさんにぜひお任せしたいと思ったんです。
旦那さん何社か打合せをしてみたんですが、初期段階から内田さんのような設計士さんが同席してくださる会社は少なかったんですよね。僕たちはすでに賃貸時代から住みたい家のイメージをしっかり持っていたので、リノベーションの具体的な話から入れたのが嬉しかった。他の会社さんはわりと厳格な感じで、施主の意見やアイデアをあまり気軽に話し合えないような雰囲気だったので、それは僕たちには少し合わないかなと。
内田それは良かったです。てまひま不動産では、物件案内などの早い段階からより具体的なリノベーションのイメージをお客様に持っていただけるよう、設計士が同席することも多くなってきました。
旦那さんお金の話から始まる会社さんが多いなか、てまひまさんはデザインから打合せが出来てイメージが膨らむので初期段階から楽しかった。その後のやりとりも、てまひまさんは僕たちの希望を総合的に汲んでデザインに反映してくださって「一緒に家づくりを進めてくださるチーム」って感じで進めやすかったです。
編集部ローンやお金のことはしっかり真剣に考えつつ「理想の暮らしを実現させたい!」というワクワクした気持ちは家づくりに大切ですよね。
かなさん初期の打合せの時に、内田さんが私たちの話をもとにスケッチを描いてくださったんです。それでもう、テンションが上がっちゃって(笑)。
内田僕も最初に打合せした際に、ご夫婦でかなり情熱のこもった資料をまとめて持ちこんでくださったのが印象的でした。賃貸時代のお家の写真を見て、ひと目で“リノベ好き”だと分かりましたよ。
編集部デザインする上で、どんなテーマをお持ちだったんですか?
かなさん賃貸時代から大切にしていたテイストをベースに、レトロなガラス戸や古い建具などのアンティークや古道具が似合う家にしたいと思っていました。
旦那さん僕は無垢材や自然素材を取り入れて住み心地の良い家にしたいなと。旧居での暮らしをもとに家のイメージを膨らませていったので、ふたりの進めたい方向性は共通していたと思います。
内田プランを決める段階で、どんなお客さまでもご家族同士で意見が分かれる場面は必ずあるのですが、おふたりは共通する部分への着地点の見つけ方が非常に上手だなと思いました。
足りないところは自分たちでD.I.Y.
編集部中古戸建てならではの難しさはありましたか?
旦那さん新築と違うのが「開けてみないとわからない」というところですね。基本的な間取りを決めてから、床の部材や建具などの具体的な検討に入っていったのですが、この段階から内田さんとはかなり綿密に話し合いました。
内田木造建築の壁には「筋交(すじかい)」という横揺れを防ぐ木製の斜材が入っています。家の強度を保つため筋交を残した状態で空間をつくっていくのですが、リノベーション前の段階では、壁のどこに入っているかまでは図面に明記されていないので、壁を取り去らないとどこに筋交があるのか分からない。そのため、筋交をデザインに取り入れた空間をおふたりと相談しながらつくっていきました。
旦那さん僕たちも木のぬくもりを大切にしたかったんです。家自体も出来るだけ化学物質を含む壁紙や天井板などの仕上げ材を避けて、柱や梁などの構造体を露出させる「躯体現し」にしたいと最初の段階から考えていたので、筋交もあえてむき出しでも良いかなと思っていました。
編集部現状をこと細かに確認しつつ、納得しながら進められると安心感がありますね。
かなさんあとは収納や本棚、壁の塗装などはできるだけ自分たちでやろうとしていたので、そのためのスペースや設置用のレール、塗装に向いた壁紙まで細かく相談に乗ってくださったのも嬉しかったですね。
旦那さんD.I.Y.は賃貸時代からふたりで挑戦していて、この家でも下駄箱やダイニングの棚、キッチン下の調味料棚も、主に妻が主導で作りました。2階の書斎の壁も自分たちで塗っています。いつの間にか妻が腕を上げて、僕よりもD.I.Y.が得意なんですよ(笑)。
かなさん気がついたらいつの間にかね。もともとこういう作業は苦手なはずだったんですけど、挑戦するうちに、今では自分たちの必要なものはあらかた作れるんじゃないかと思っています(笑)。
編集部日々をとことん楽しみながら、足りないものは自分たちでつくるスタイルですね。
かなさんこれからカーテンレールの設置やキッチン脇の作業スペース、屋根裏の空間など、さらに手を加えていく予定です。まだまだやることがたくさんあって、楽しみが尽きないですね。暮らしながら家を少しずつ育てている感覚です。
家が創作意欲を掻き立てる
編集部もうここに住まれて1年になりますが、いかがですか?
旦那さん僕は自然が好きなので、東京都のなかでも空気が綺麗だと感じられる場所に家を持つことができて嬉しいです。夏は近くの川に遊びに行ったり、都心で見かけなかった野鳥を写真に収めたり。自然素材に囲まれた家と、自然豊かな環境が揃った暮らしになりました。
かなさん賃貸時代の家はどうしてもビニールクロスが使われた箇所があって気になっていましたが、今の家は入った瞬間「良い木の匂いがする〜!」と癒されています。夏場は素足で歩いていると気持ちが良いし、居心地が良くて呼吸がしやすい。まちで遊ぶよりも、家のなかで遊びながら時間があると「何かつくろうか!」と、創作意欲がどんどん湧いてくるんです。
内田おふたりの暮らしがそうなるように、家が“仕向けて”いるのかもしれませんね。おふたりの暮らしの幅が広がるような家づくりをお手伝いすることができて本当に嬉しいです。
最寄り駅からの距離よりも、豊かな自然環境にあるお家を選びつつ、自分たちで大切にしてきた暮らしのスタイルを、戸建てリノベーションでさらに充実させたご夫婦。自然素材に囲まれた空間でふたりで家具を手づくりしたり、照明器具などを少しずつ買い足したりしながら、家を“育てて”いく毎日は、自然や四季に彩られた、素敵なものになりそうです。
企画:株式会社リブラン
文:遠藤ジョバンニ
編集:tarakusa
写真:土田 凌