「見えない風」を見てみたい
盆地で「夏は暑いところ」で有名な 京都の町家 では、”大きな光庭”と”小さな庭”の間に 二間続きの和室 を設けています。盆地ですから上空には風があるのでしょうが、人が暮らす地面レベルには、あまり風を感じない。そんな気候のようです。
すごいな・・・。と思うのは、そんな京都でも、涼しく暮らす知恵があったんですよね。先ほどの二間続きの和室には、微妙に風が揺らぐのです。少し汗をかいていると、その汗が気化し、涼しさを感じるんです。この仕組みの面白さは、大きな光庭と小さな庭のセットにあるのです。大きな庭には光が差し込み、湿度を帯びた土の水分が気化し、僅かな上昇気流を作ります。すると、”光のあたらない小さな庭”の涼しい空気が、「すっ」と入ってくるんですね。まさに揺らぐ、という感じなのです。
この「すっ」と入ってくる風をつくるために、大切なキーワードは他にもうひとつあるのです。それは「二間続き」という言葉です。つまり現代のマンションに組み替えてお話しすると、第1話の「框(かまち)扉」の役割(風が通るポイントとして)と同じなのです。
風が「すっ」と入る間取りをつくるためには、やはり二間続きのような考え方、つまり緩やかに風が通る風洞のようなものがより多くある必要があるのです。すると、この「すっ」と入る風がどのように流れていくのか、見てみたくなりました。
風を見るって、ちょっと不思議な気もしますが、そうやって念じているとリブランひと住文化研究所から、CPU社の通風シュミレーションソフトのことを聞きました。これを使うと、その間取りではどのように風が流れるのかを目で見ることができるというのです。あくまでシュミレーションではありますが、部屋の多くの範囲に風が動くことが確認できました 。一方、 田の字プラン では 風のほとんど動かないエリアが多くある 事も確認でき、改めてプランに対する自信が増しました。また、事前に風のチェックができるだけでなく、窓の開閉パターンによる風の流れの変化も確認できるので、プラン設計する際に大いに役立ちました。
さらには、風が通る経路を数値化することで、住まいの通風性能を評価する Breeze Line(BL)値 と、住まいの総面積に対して通風領域の割合を示す Ventilation Level(VL)値 で、間取りプランの通風性能を評価できるようにしました。
通風性能を数値化することで、お客様とお話する際、同じ基準で間取りを検討していただくことが可能になりました。シュミレーションや数値で「風を見る」ことで、より具体的にエコヴィレッジの良さが分かっていただけると思います。
これから間取りを見る際は、広さや部屋数だけでなく、通風性能という視点からもご覧ください。住まいの新しい価値を発見していただけるはずです。