不動産登記と相続税申告

コラム2023-12-08

相続登記と相続税申告のスムーズな方法

土地や家屋などの不動産所有者が亡くなった場合、亡くなった人の名義から相続する人の名義に変更する「相続登記」を行なう必要があります。

相続登記を放置すると生まれる3つのリスク

不動産を売却できない

不動産は、亡くなった人の名義のままで売却することはできません。不動産を売却するには、相続した相続人に名義変更してから、売却手続きを行なう必要があります。従って、良い買い手が現れ、急いで相続した不動産を売却したい場合、相続登記が済んでいないことが理由で売却の機会を逃してしまう可能性があります。

不動産を担保に借入ができない

相続した不動産を担保にして銀行から融資を受けたい場合、相続登記を済ませておかないと、相続した不動産を担保に設定することができません。

相続手続きの複雑化

相続登記を怠ったまま、不動産を相続した人が亡くなってしまうと、手続きが複雑化します。すぐに相続登記を行なえば、親子や兄弟といった近い関係者で相続手続きを行なうことができますが、相続登記をしないまま次の相続が起こると、他の法定相続人と手続きを行なわなければなりません。相続手続きが非常に煩雑になり、トラブルの原因にもなりかねません。

このような相続時特有の問題を避けるためにも、不動産の相続登記は速やかに済ませておいたほうが良いでしょう。

不動産相続登記の義務化

現在(令和5年12月)の法律では、相続登記が義務ではありませんでした。そのため、相続登記がされない土地が多く存在し、所有者不明な土地件数増加が問題となっていました。

そこで、令和6年4月1日から、不動産の所有者が亡くなったことで不動産を相続した人は、取得日から3年以内に相続登記申請することが義務化されます。

これは、施行日前の相続不動産にも適用されます。正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科されることになるので注意が必要です。

相続税の申告と納付の流れ

身近な人が亡くなった時に最も大変なのが相続税の申告と納付です。相続税の申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内で、原則として現金で一括納付になります。相続税の申告・納付までの流れを簡単に示すと次のとおりです。

  1. 相続財産が全体でいくらになるかを評価・計算
  2. 計算した相続財産額で相続税がかかるかどうかを確認
  3. 遺言書または遺産分割協議書に従って遺産を分ける
  4. 各相続人が相続した額に応じて、各相続人の納税額の確定
  5. 各相続人が相続税を申告・納税

相続人が複数の場合は連帯責任

相続税の納付は、故人の財産を相続した相続人各人が行ないますが、相続人が複数の場合、相続税を納税できない人がいると、相続人全体で納税の責任を負う「連帯納付義務」が生まれる可能性があります。

万一、10か月以内に相続税を納税できない場合は延滞税が加算されます。相続税納付期限までにどうしても現金納付ができないときは、「延納」や「物納」といった方法もありますので、早めに納税方法も確認するようにしましょう。

相続時に税務署からの連絡

相続税に関しては、「相続税についてのお知らせ」という文書が税務署から送られてくるケースがあります。この文書は、相続税がかかりそうな広範囲の人に送る「相続税についてのお知らせ」と、より確実に相続税がかかると思われる人に送る「相続税の申告等についてのご案内」があります。

特に、「相続税の申告等についてのご案内」が送られてきた場合は、税務署が高い確率で相続税がかかる相続人だと思っている可能性が高いです。

相続税申告の注意点

これらの相続税にまつわる文書は、税務署が内部情報から推定して一定の方に送っている為、すべての家庭に届くものではありません。相続税のお知らせが届いたからと言って、必ず相続税申告が必要なわけではなく、逆に相続税のお知らせが届かないから相続税の申告が必要ないということでもありません。相続税の申告が必要かどうかは、ご自身で判断して対応する必要があります。

 

執筆者プロフィール

服部 誠(はっとり まこと)

税理士法人レガート
税理士・ファイナンシャルプランナー
税・財務の専門家として、個人の資産運用や相続・事業承継に関するコンサルティング、相続税の申告業務において多数の実績をもつ。
相続申告・贈与申告・譲渡申告などの関与件数は2,000件を超え、その経験を基にメディア等での執筆活動や講演活動も行っている。
著書:「相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法」(幻冬舎)、「贈与税の実務とその活用ポイント」(税務研究会出版局) 他多数。