ECO village
設計思想
第6回

大切なのは、人と人との関係

最後となった今回は、少し個人的なお話しをさせていただくことをお許しください。

私は左官屋の息子として大阪で生まれました。大学に入学するまで住んでいたのは、3つの部屋と台所、お風呂といった小さな家でした。自分の部屋というものもなく、宿題も居間のちゃぶ台でやっていました。今で言うプライバシーなんてない生活でしたね。何をするにも、目の隅に家族の姿が映っていたように思います。それは、常に誰かに見られているとも言えますが、いつも誰かに見守られているとも言えるのではないでしょうか。

コミュニティルームイラスト

私は、家族の間で、親子の間で、プライバシーってそんなに必要なんだろうか疑問に感じます。プライバシーより、お互いに何をやっているのか、何を考えているのかわからない方が問題だと。

個人的には、家族のプライバシーを守るための住まいよりも、家族間の風通しをよくする住まいの方がいいんじゃないか、と考えています。たとえば、家族一人ひとりが意識しなくても自然と顔を合わせる機会が多い導線づくり。ひとつの場所に閉じこもるのではなく、住まいの中を吹き渡る風のように子どもが走りまわれる住まいづくり。私はそんな住まいをひとつでも多く企画したいと思っています。

また私は、リブランに入社する前のキャリアで、多くの戸建て住宅を設計してきました。家を建てられるご家族に直接お会いして、どんな暮らしがしたいのか?家族がどんな趣味をもっているのか?どれくらの荷物を収納したいのか?さまざまなお話をし、要望を聞きながら設計します。そして家が完成した後も、住み心地はどうか、暮らしにくい場所はないかなど、お客様との関係は続きます。私を設計士として成長させてくれたのは、やはりお客様の声や笑顔だったと思います。空間としての評価だけでなく、実際にそこに暮らし、ご飯を食べ、睡眠をとっているお客様の声は何ものにも代え難いものです。

多くのマンションの場合、住戸を引き渡してしまったら、企画者とお客様との交流はなくなってしまう、というのがほとんどだと思います。企画者とお客様の関係が切れてしまうのは、私にとっては辛いことであり、残念なことであります。ところがリブランでは、エコミックスデザイン に関するセミナーやワークショップなどを通じて、住居者の方々との関係が続いていきます。

また、エコヴィレッジはみんなで育てていく住まいです。私も、入居者の方々と同じように、その成長を見守りたいし、入居者の方々といろんなお話しをさせていただきたいと考えています。

第6回までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

このホームページを通して、多くのマンションを見て疑問に思うこと、歯に衣着せず、語ることができたように思います。違う考え方があることも充分承知しています。

でも、リブランのエコヴィレッジにお住まいの方々から、”去年の夏はエアコン使わなかったよ!”というお声を頂いたりすると、夏休みに田舎に帰り、暑い日差しを避けた縁側でスイカを食べているときに感じる”あの風の心地よさ”をマンションの中にもお届けしたい。昔のような気持ちよい風が緩やかに吹く住まいをぜひお届けしたい、という思いはより強くなるのです。

語り手:株式会社リブラン事業企画部 樋口
自然との共存を大切に、設計事務所にてコーポラティブハウスを手掛けてきたが、 もっと多くの人にこの思いを伝えたいとリブランに入社。「エコヴィレッジシリーズ」の企画・設計を担当。一級建築士。