ECO village
設計思想
第2回

風の道 V.S. 収納スペース

リビングの入り口にある框(かまち)扉が「バターン!」と閉まり、風の流れが分断 されてしまう。そのような息苦しいプランではなく、ひとと風が住まいをのびのびと回遊できるプランをひとつでも多く設計したい。住まいに、どれだけ多くの風の道をつくれるか、それが大きなチャレンジになりました。

たとえば、エコヴィレッジ鶴瀬という物件では全219戸のうち全戸が南東向き、もしくは南西向きです。つまり、南側にバルコニーがあり、北側に玄関があります。風は基本的に南と北の間を駆け抜けます。そこで私は、キッチンや収納をできるかぎり 南北軸の縦型に配置 するようにしました。そのなかでも特に特徴的なのが、バルコニー側の居室と玄関側の居室の間に、南北にのびた ウィンド・スルー・クロゼット(WTC) です。日本のマンションでは、ウォーク・イン・クロゼットを採用しているプランはあっても、風やひとが通り抜けできるウィンド・スルー・クロゼット(WTC)を採用しているプランは、ほとんどないのではないでしょうか。

エコヴィレッジマンションシリーズでは、エコミックスデザインという思想 から建物を企画・設計します。そこから生まれたのが、ウィンド・スルー・クロゼット。名前の通り、 風の通り道 を確保することを目的にしたクロゼットですが、これを採用するには多少の迷いがあったのも事実です。それは、何か?ひとが歩けるスペースを確保する分、収納スペースが減ってしまうということです。

風を天然のエアコン だと考えるエコミックスデザインは、極論を言えば、多少収納スペースが減っても、住まいに風が行き渡る設計を重視します。それは理解できるのだが・・・やはり収納スペースは少しでもムダにしたくない。そんな葛藤のなか思いついたのが、ウィンド・スルー・クロゼット(WTC) のひとが通る頭上にパイプを通して、上部に洋服を吊せるようにしたり、可動棚板を設置することにより長物の収納スペースを作ろうという発想。頻繁にひとが通るワケではないし、衣替えの季節に風の通る道に服を吊せば、陰干しにもなるじゃないか、と考えました。貧乏性というか、なんというか、少しのスペースでも有効に使ってやろうというこだわりが私にはあるようです。

ウィンド・スルー・クロゼット(WTC) を活用して、住まいに風の道をつくる。この道を私たちは「Breeze Line(BL)-ブリーズライン」と名付けました。しかし私はすぐに次の壁にぶち当たりました。ウィンド・スルー・クロゼット(WTC) を設置する余裕のないプランはどうするか?どうやって、風の道を確保するか?うーん、難題でした。

では、そのお話は次回でさせていただきます。

語り手:株式会社リブラン事業企画部 樋口
自然との共存を大切に、設計事務所にてコーポラティブハウスを手掛けてきたが、 もっと多くの人にこの思いを伝えたいとリブランに入社。「エコヴィレッジシリーズ」の企画・設計を担当。一級建築士。